四兄弟神の星 6
四兄弟神の星 6
第一章 リュウ蛇人の山を越える 6
真夜中、リュウは獣の吠える声に目を覚ました。
”あれは、何かを呼んでいる。
草原の方だ”
耳を澄ますと、微かだが、それに応じるらしい声も幾つも聞える。
「夜、歩き廻るのはロクな奴じゃない。用心しよう」
トロを起こし、オモンを起こした。
カラが目を覚ますと言った。
「狼の狩の呼び声のようだ。
奴らは仲間を集めて狩をする」
「随分数が多そうだな」
「こちらに来ると面倒だぞ」
「木に登っていよう」
彼等は銘々の木に登った。
木の上から見ると、星明りの草原に幾つもの動く影、その中央にかたまった群。
「昼間、ターナが見付けた群だ」
それは狼に追われて逃げ惑っているらしい。
狼はみるみるうちにその群を囲んでしまった。
その群の動物は頭を中にして円陣を作る。
狼が飛び掛かると、強い後ろ足のバネが狼を蹴飛ばす。
一際大きな狼が大きく跳躍して、群の一番大きな奴に飛び掛かり、背にかぶりついた。
そいつは驚いて群から離れ、駆出した。
円陣が乱れ、他の狼は一斉に襲い掛かる。
何頭かは飛出して四方に逃げて行った。
始めに狼に飛び掛かられた一番大きな奴は森の方にめちゃめちゃに駆けて来、狼は振り落とされまいとその背に食らいついていた。
リュウはそれが真っ直ぐ自分の木の下に来るのを見ていた。
それで目の下を通り過ぎた時、ナイフを投げた。
ナイフは狙い通り狼の頭に刺さり、狼はその動物の背からどさりと地に投げ落とされた。
その動物も暫く走って、どさりと倒れてしまった。
リュウはナイフを抜取り、狼がもはや動かないのを確かめ、木から飛降りた。
倒れた動物に近付くと、それは起上がろうともがいていた。
リュウがナイフを構えると、それの目と合った。
澄んだきれいな目で、おまえはなぜ私を殺すのか、と問い掛けているようだった。
リュウはナイフを納め、その背中の傷口を調べて薬を塗ってやった。
そいつはもがくのを止めた。
「リュウ」
ターナの鋭い声。
何時の間にか、一頭の狼が忍び寄り、振返ったリュウに飛び掛かった。
リュウの手に再びナイフが煌めいた。
きゃうんという悲鳴と共にそいつが倒れ、辺りを見ると、なお二、三頭がリュウを狙っている。
この動物を追って来たのだ。
一頭がリュウを狙って飛上がった。
が、リュウまで届かず、どさっと落ちた。
その背に太い木の槍。
すぐもう一本が飛んで来て、他の狼の背を貫いた。
残った一頭は尻尾を巻いて草原に駆け戻って行った。
リュウは倒れたままのその動物を引起こしてやった。
トロが木から滑り下りて来た。
「リュウ、どうするつもりだ。
狼はまだ幾らでも近くに居るのだぞ」
「大きな火を焚けば襲って来ないよ。
それにあの獲物で満足しているさ」
リュウはその動物の首を叩きながら言った。
そいつはじっと仲間が狼に倒された方を見ていた。
「ああ、こいつも一人ぼっちになっちゃったのだ」
ターナが舞下りて、リュウの肩に止まりながら言った。
オモンとカラも下りて来て、大きな火を焚いた。
狼は近くまで来たが、火のせいか、満足しているせいか、襲っては来なかった。
リュウはその夜ずっと、その動物の手当をした。
そいつはそんなリュウを涼しい目で見詰めていた。
カラの辞書に寄ると、
昔、この星が大草原に覆われていた頃、大型の大人しい草食動物ラガーは至る所に棲息していた。しかし草原が畑になり街になると、姿を消し絶滅した、と伝えられている。
昔、大草原に君臨していた草原狼は、草原がなくなると共に東に去り、蛇人の山の向うの大魔境で滅亡した、と伝えられている。
第一章 リュウ蛇人の山を越える 6
真夜中、リュウは獣の吠える声に目を覚ました。
”あれは、何かを呼んでいる。
草原の方だ”
耳を澄ますと、微かだが、それに応じるらしい声も幾つも聞える。
「夜、歩き廻るのはロクな奴じゃない。用心しよう」
トロを起こし、オモンを起こした。
カラが目を覚ますと言った。
「狼の狩の呼び声のようだ。
奴らは仲間を集めて狩をする」
「随分数が多そうだな」
「こちらに来ると面倒だぞ」
「木に登っていよう」
彼等は銘々の木に登った。
木の上から見ると、星明りの草原に幾つもの動く影、その中央にかたまった群。
「昼間、ターナが見付けた群だ」
それは狼に追われて逃げ惑っているらしい。
狼はみるみるうちにその群を囲んでしまった。
その群の動物は頭を中にして円陣を作る。
狼が飛び掛かると、強い後ろ足のバネが狼を蹴飛ばす。
一際大きな狼が大きく跳躍して、群の一番大きな奴に飛び掛かり、背にかぶりついた。
そいつは驚いて群から離れ、駆出した。
円陣が乱れ、他の狼は一斉に襲い掛かる。
何頭かは飛出して四方に逃げて行った。
始めに狼に飛び掛かられた一番大きな奴は森の方にめちゃめちゃに駆けて来、狼は振り落とされまいとその背に食らいついていた。
リュウはそれが真っ直ぐ自分の木の下に来るのを見ていた。
それで目の下を通り過ぎた時、ナイフを投げた。
ナイフは狙い通り狼の頭に刺さり、狼はその動物の背からどさりと地に投げ落とされた。
その動物も暫く走って、どさりと倒れてしまった。
リュウはナイフを抜取り、狼がもはや動かないのを確かめ、木から飛降りた。
倒れた動物に近付くと、それは起上がろうともがいていた。
リュウがナイフを構えると、それの目と合った。
澄んだきれいな目で、おまえはなぜ私を殺すのか、と問い掛けているようだった。
リュウはナイフを納め、その背中の傷口を調べて薬を塗ってやった。
そいつはもがくのを止めた。
「リュウ」
ターナの鋭い声。
何時の間にか、一頭の狼が忍び寄り、振返ったリュウに飛び掛かった。
リュウの手に再びナイフが煌めいた。
きゃうんという悲鳴と共にそいつが倒れ、辺りを見ると、なお二、三頭がリュウを狙っている。
この動物を追って来たのだ。
一頭がリュウを狙って飛上がった。
が、リュウまで届かず、どさっと落ちた。
その背に太い木の槍。
すぐもう一本が飛んで来て、他の狼の背を貫いた。
残った一頭は尻尾を巻いて草原に駆け戻って行った。
リュウは倒れたままのその動物を引起こしてやった。
トロが木から滑り下りて来た。
「リュウ、どうするつもりだ。
狼はまだ幾らでも近くに居るのだぞ」
「大きな火を焚けば襲って来ないよ。
それにあの獲物で満足しているさ」
リュウはその動物の首を叩きながら言った。
そいつはじっと仲間が狼に倒された方を見ていた。
「ああ、こいつも一人ぼっちになっちゃったのだ」
ターナが舞下りて、リュウの肩に止まりながら言った。
オモンとカラも下りて来て、大きな火を焚いた。
狼は近くまで来たが、火のせいか、満足しているせいか、襲っては来なかった。
リュウはその夜ずっと、その動物の手当をした。
そいつはそんなリュウを涼しい目で見詰めていた。
カラの辞書に寄ると、
昔、この星が大草原に覆われていた頃、大型の大人しい草食動物ラガーは至る所に棲息していた。しかし草原が畑になり街になると、姿を消し絶滅した、と伝えられている。
昔、大草原に君臨していた草原狼は、草原がなくなると共に東に去り、蛇人の山の向うの大魔境で滅亡した、と伝えられている。
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