四兄弟神の星4 第一章
四兄弟神の星 4
第一章 リュウ蛇人の山を越える 4
その日、三人は川の向うに深い森を見下ろす小高い丘の上に着いた。川から先は地図に依ると、海だった所だ。
数日前からターナは北に進むのをいやがっていた。
こうして眺めると、リュウもカラも異常なものを感じた。
「まさに鬼哭啾啾じゃ」
「何? それ?」
「死んだ者が泣いておる」
「怖いよう」
ターナがべちゃとくっついて来ても、この時ばかりはリュウも冷たく追ったりしなかった。
「海が森になったので、死んだ者が泣いているの?」
「いや、本当に泣いているかどうか、知らんぞ」
「東は蛇人の山の続きに行き当るみたいね。
この川は越えるには広いし、深そうだ。
川に添って西に行ってみよう。
今夜はこの丘で寝よう」
対岸の森は東に行くに従って高くなり、川は幅を増している。
南から続く蛇人の山は川に当って、鋭く切れ込み岩の壁になっている。
その辺り対岸の森も高い山になり、同じ様に切れ込んだ岩の崖だった。
その高い岩の崖の間を川は白いしぶきを上げ渦巻いて流れ込んで行くのが、遠くからでも夕日に照されて眺められた。
「岩の門だね。
あの辺りが一番気持が悪い。
白いしぶきが血に染っている心地がする」
「北へ、東へ走った者達はきっと、あそこで多く死んだのではないかな」
「もう、そんな話やめてよう!」
ターナが震えながら頼んだ。
リュウは冷たい微笑を浮かべながら言った。
「よしよし、やめよう。
対岸の森の様子を見て来てくれ」
「僕を置いて、どこへも行かない?」
「今日はもうどこへも行かないよ」
カラは荷物を下ろしながら、言った。
「あの森も奇妙だね」
ターナが飛立つと、リュウはまた言った。
「見た所、密生していて入る余地がない。
たとえ川を渡れても森に入れない。蟻一匹入れないに違いない。
枝も高い。登るわけにもいかない。
東は岩門。北は立木の壁。
人が生きているとは考えられない」
カラは今夜の食事のために地虫を掘り始めた。
「地虫もおらん。
草も生えてない。
将に死に絶えた地だ」
「森の中にはいろんな動物が遊んでいたよ。
可愛いのや大きいのや、憎らしいのも」
戻って来たターナは、指で口を開いて、牙をむく真似をした。
「森に入る事を考えよう」
食べ物がなくとも、大人しく眠った所を見るとターナは森で何か食べて来たに違いない。
真夜中、異様な気配にリュウは飛起きた。
ひたひたと静かに寄せる水音がする!
彼等が眠る丘は川から離れている筈。
真っ暗だ。
”上流が大雨になって、川の水かさが増えた。
雨のせいで、この辺りも暗い”
それでも、何かおかしい。
静か過ぎる。
カラとターナを起こした。
ターナはなかなか起きない。いつもは、リュウが寝返りを打っただけでも目を覚ます目ざといターナなのに。
ポトン。
何が水に落ちたのだ?
クチャクチャ、う?
食べてる?
囁いている?
「わあ!
怖いよう。
真っ暗だ!
闇に食べられちゃう」
やっと起きたターナは悲鳴をあげた。
その声で、リュウも恐怖を覚えた。
「ターナ、飛びなさい」
起きたカラが言った。
突然リュウは足を掴まれた。
強く蹴飛ばすと、水だった。
冗談じゃない。水に足を捕まえられるなんて。
大きな波が頭上から覆い被さって来た。
リュウの細長い筒で打つと波は砕け散った。
は?
横ではカラも忍び寄る水を殴っている。
これは何だ?
ターナは空高く、飛上がった。
”おかしいなあ!
よく晴れているのに”
上空は星が輝いている。
遠くまでよく見通せた。
リュウ達と眠った丘の周りだけが暗い。
真っ直ぐ流れていた川が丘の方に流れ、そこだけ水が盛り上がって、騒いでいる。
ターナは昼間、川が流れていた上を飛んだ。
”あれ?
あんな人居なかったのに、どこから来たのかしら?”
水の消えた川床を横切って、一人の男がふらふら歩いている。
川床の砂がさらさら動き、男の足に絡み付く。
男は今目が覚めたように驚き、駆出した。
砂は追って来た。
移動した砂の跡から、人の手が出て、頭が出て来た。
もがいて、砂の上に出ようとしている。
ターナはその手を引張ってやった。
体の大きな男で、全身が現れるまで、もたもたしていると、始めの男を追って行った砂が戻って来た。
「わ! 大変! また埋もっちゃう」
二人が大騒ぎしていると、始めの男が振返った。
「あ! オモン。こんな所にいたのか?」
「やあ! トロ。
ちょっとここから、出してくれ。」
トロと呼ばれた始めの男は途中まで戻って来たが、砂が再び絡み付き近づけなかった。
「手を貸せ」
トロはいきなりターナの反対側の手を掴んで、引張り始めた。
「わあん! 痛いよう!」
「離すなよ」
ターナはわあわあ泣いたが、二人の男はしっかり両方から掴んで離さない。
丘の上では、リュウもカラも増えて来る水に胸まで浸かっていた。
体を捕まえられた感覚にリュウは腹を立てて、水に潜った。
水中に黒い中心があり、彼を睨んでいる。
筒をその方向に構え、握りのボタンを幾つか操作した。
白い光が水の中を走り、黒い中心は砕けた。
カン。
同時に水はさっと引き、二人は丘の上で腹這っていた。
川床でも第二の男オモンを捕えていた力がなくなり、ターナとトロは砂の上に投出された。
「早く岸に!
水が戻って来る」
砂から解放されたオモンが二人を助け起こした。
ターナはさっと空に飛上がり、丘が見えたので、リュウの元に逃げ戻った。
第一章 リュウ蛇人の山を越える 4
その日、三人は川の向うに深い森を見下ろす小高い丘の上に着いた。川から先は地図に依ると、海だった所だ。
数日前からターナは北に進むのをいやがっていた。
こうして眺めると、リュウもカラも異常なものを感じた。
「まさに鬼哭啾啾じゃ」
「何? それ?」
「死んだ者が泣いておる」
「怖いよう」
ターナがべちゃとくっついて来ても、この時ばかりはリュウも冷たく追ったりしなかった。
「海が森になったので、死んだ者が泣いているの?」
「いや、本当に泣いているかどうか、知らんぞ」
「東は蛇人の山の続きに行き当るみたいね。
この川は越えるには広いし、深そうだ。
川に添って西に行ってみよう。
今夜はこの丘で寝よう」
対岸の森は東に行くに従って高くなり、川は幅を増している。
南から続く蛇人の山は川に当って、鋭く切れ込み岩の壁になっている。
その辺り対岸の森も高い山になり、同じ様に切れ込んだ岩の崖だった。
その高い岩の崖の間を川は白いしぶきを上げ渦巻いて流れ込んで行くのが、遠くからでも夕日に照されて眺められた。
「岩の門だね。
あの辺りが一番気持が悪い。
白いしぶきが血に染っている心地がする」
「北へ、東へ走った者達はきっと、あそこで多く死んだのではないかな」
「もう、そんな話やめてよう!」
ターナが震えながら頼んだ。
リュウは冷たい微笑を浮かべながら言った。
「よしよし、やめよう。
対岸の森の様子を見て来てくれ」
「僕を置いて、どこへも行かない?」
「今日はもうどこへも行かないよ」
カラは荷物を下ろしながら、言った。
「あの森も奇妙だね」
ターナが飛立つと、リュウはまた言った。
「見た所、密生していて入る余地がない。
たとえ川を渡れても森に入れない。蟻一匹入れないに違いない。
枝も高い。登るわけにもいかない。
東は岩門。北は立木の壁。
人が生きているとは考えられない」
カラは今夜の食事のために地虫を掘り始めた。
「地虫もおらん。
草も生えてない。
将に死に絶えた地だ」
「森の中にはいろんな動物が遊んでいたよ。
可愛いのや大きいのや、憎らしいのも」
戻って来たターナは、指で口を開いて、牙をむく真似をした。
「森に入る事を考えよう」
食べ物がなくとも、大人しく眠った所を見るとターナは森で何か食べて来たに違いない。
真夜中、異様な気配にリュウは飛起きた。
ひたひたと静かに寄せる水音がする!
彼等が眠る丘は川から離れている筈。
真っ暗だ。
”上流が大雨になって、川の水かさが増えた。
雨のせいで、この辺りも暗い”
それでも、何かおかしい。
静か過ぎる。
カラとターナを起こした。
ターナはなかなか起きない。いつもは、リュウが寝返りを打っただけでも目を覚ます目ざといターナなのに。
ポトン。
何が水に落ちたのだ?
クチャクチャ、う?
食べてる?
囁いている?
「わあ!
怖いよう。
真っ暗だ!
闇に食べられちゃう」
やっと起きたターナは悲鳴をあげた。
その声で、リュウも恐怖を覚えた。
「ターナ、飛びなさい」
起きたカラが言った。
突然リュウは足を掴まれた。
強く蹴飛ばすと、水だった。
冗談じゃない。水に足を捕まえられるなんて。
大きな波が頭上から覆い被さって来た。
リュウの細長い筒で打つと波は砕け散った。
は?
横ではカラも忍び寄る水を殴っている。
これは何だ?
ターナは空高く、飛上がった。
”おかしいなあ!
よく晴れているのに”
上空は星が輝いている。
遠くまでよく見通せた。
リュウ達と眠った丘の周りだけが暗い。
真っ直ぐ流れていた川が丘の方に流れ、そこだけ水が盛り上がって、騒いでいる。
ターナは昼間、川が流れていた上を飛んだ。
”あれ?
あんな人居なかったのに、どこから来たのかしら?”
水の消えた川床を横切って、一人の男がふらふら歩いている。
川床の砂がさらさら動き、男の足に絡み付く。
男は今目が覚めたように驚き、駆出した。
砂は追って来た。
移動した砂の跡から、人の手が出て、頭が出て来た。
もがいて、砂の上に出ようとしている。
ターナはその手を引張ってやった。
体の大きな男で、全身が現れるまで、もたもたしていると、始めの男を追って行った砂が戻って来た。
「わ! 大変! また埋もっちゃう」
二人が大騒ぎしていると、始めの男が振返った。
「あ! オモン。こんな所にいたのか?」
「やあ! トロ。
ちょっとここから、出してくれ。」
トロと呼ばれた始めの男は途中まで戻って来たが、砂が再び絡み付き近づけなかった。
「手を貸せ」
トロはいきなりターナの反対側の手を掴んで、引張り始めた。
「わあん! 痛いよう!」
「離すなよ」
ターナはわあわあ泣いたが、二人の男はしっかり両方から掴んで離さない。
丘の上では、リュウもカラも増えて来る水に胸まで浸かっていた。
体を捕まえられた感覚にリュウは腹を立てて、水に潜った。
水中に黒い中心があり、彼を睨んでいる。
筒をその方向に構え、握りのボタンを幾つか操作した。
白い光が水の中を走り、黒い中心は砕けた。
カン。
同時に水はさっと引き、二人は丘の上で腹這っていた。
川床でも第二の男オモンを捕えていた力がなくなり、ターナとトロは砂の上に投出された。
「早く岸に!
水が戻って来る」
砂から解放されたオモンが二人を助け起こした。
ターナはさっと空に飛上がり、丘が見えたので、リュウの元に逃げ戻った。
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