四兄弟神の星 1
四兄弟神の星 1
第一章 リュウ、蛇人(だじん)の山を越える 1
春、リュウは蛇人の山を越え、カラと出会う
トロとオモン再生し、星人の再生始まる
山の上から見ると、行く手の赤い大地と黒い空の間に一本の灰色の筋が西に延びていた。
”死人の棲み家だ”
リュウは夜明け前に殺した女を思い出した。
蛇人と戯れるその姿があまりにもおぞましく、発作的に背の筒を取り手元のボタンを操作していた。筒からは火炎が吹出し、おぞましい光景は一瞬で消えた。
通りすがりに覗いた岩穴に居た見知らぬ女だが、人間がそこまで淫に堕ちれる事に彼は憂鬱になっていた。
ターナは越えて来た緑の山を振り返り、真っ青な空に明るい太陽が昇りつつあるのを確かめ、リュウの持つ例の細長い筒に手を伸し身をすり寄せた。
卵から孵ってやっと数十日の鳥人ターナにとってまだ十五才のリュウが唯一の保護者だ。
リュウはその小さな黒い身体を無視して、その筒(内蔵の原子力により様々な機能を持つ万能銃とも言うべき鉛の筒)を背に括り付け、緑の山から赤い大地に向って下りて行った。彼の動きにあわせて、銅の小札(コザネ)がチリチリと小さな声で呟いて、無言のリュウに代ってターナに返事をした。その小札はリュウの冷たく整った顔以外の全身を鱗のように覆い、彼の履く木のサンダルにも厚い銅の板が填め込まれている。
ターナは、身長がリュウの半分しかないのに、リュウの身長以上に伸びた大きな黒い羽をばたつかせ、枯れ木の様に細い足でぴょんぴょん飛んで、彼の後を追った。
赤茶けた砂地の白い石の陰に僅かの緑草が生えている。そんな景色が暗い地平線にまで広がっていた。
「蛇の山も気分悪かったけど、草も木も生えていたよ。四つ足の小さな動物も居たよ。
山に帰りたいなあ」
ターナはリュウが黙って歩いているので、半ば独り言のように言った。
「それにこのまま行ったら、きっと食べる物がないよ」
それでもリュウは黙っている。
”僕、夜になってリュウが眠ったら、山に戻って何か食べ物を捜して来よう”
とターナは考える。
蛇人の山も遥か後ろになり、円形の荒野の中心を二人はとぼとぼと歩き続けた。
「ターナ、何か見えないか」
リュウがそう言ったのは太陽が行く手に見える頃だった。
ずっとリュウのことばを待っていたターナはすぐに高く飛上った。
それを見上げてリュウはターナが以前ほど羽根をばたつかせないで、軽く飛べるのに気が付いた。
”あいつが生れてから数十日だ。鳥人は成長が速いな。僕は十才にならないと一人歩きさせて貰えなかった”
「何もなかったよ」
ターナは降りて来るとすぐに言った。
「東の方に山が見えたろう」
「うん」
「南の方は」
「空が真っ暗だ。地面も真っ暗だ」
「北は?」
「森があった。山みたいにたくさん木があった」
”ここからは見えない。一日以上かかるに違いない”
「その辺りは気分が重いよ。黒い空気が死んでる」
「西は?」
リュウは辛抱強く言った。
「遠くは真黒。
太陽があるのに明るくない。
近くには大きな岩がころん。
それだけ」
”それだけ報告できれば上出来だ。いまいましい鳥人め”
リュウは再び歩き始めた。
ターナの言う近くの岩が見えたのは、もうかなり日が傾いていた。
それは道のすぐ傍らにあった。
始め、平坦な大地にころんと転がった豆粒のように見え、近付くと背丈の二倍はある丸い岩で下部は地面に埋もれていた。
通り過ぎる時、誰かに見られている感じがして、リュウは立止まり、ゆっくり振向いた。
第一章 リュウ、蛇人(だじん)の山を越える 1
春、リュウは蛇人の山を越え、カラと出会う
トロとオモン再生し、星人の再生始まる
山の上から見ると、行く手の赤い大地と黒い空の間に一本の灰色の筋が西に延びていた。
”死人の棲み家だ”
リュウは夜明け前に殺した女を思い出した。
蛇人と戯れるその姿があまりにもおぞましく、発作的に背の筒を取り手元のボタンを操作していた。筒からは火炎が吹出し、おぞましい光景は一瞬で消えた。
通りすがりに覗いた岩穴に居た見知らぬ女だが、人間がそこまで淫に堕ちれる事に彼は憂鬱になっていた。
ターナは越えて来た緑の山を振り返り、真っ青な空に明るい太陽が昇りつつあるのを確かめ、リュウの持つ例の細長い筒に手を伸し身をすり寄せた。
卵から孵ってやっと数十日の鳥人ターナにとってまだ十五才のリュウが唯一の保護者だ。
リュウはその小さな黒い身体を無視して、その筒(内蔵の原子力により様々な機能を持つ万能銃とも言うべき鉛の筒)を背に括り付け、緑の山から赤い大地に向って下りて行った。彼の動きにあわせて、銅の小札(コザネ)がチリチリと小さな声で呟いて、無言のリュウに代ってターナに返事をした。その小札はリュウの冷たく整った顔以外の全身を鱗のように覆い、彼の履く木のサンダルにも厚い銅の板が填め込まれている。
ターナは、身長がリュウの半分しかないのに、リュウの身長以上に伸びた大きな黒い羽をばたつかせ、枯れ木の様に細い足でぴょんぴょん飛んで、彼の後を追った。
赤茶けた砂地の白い石の陰に僅かの緑草が生えている。そんな景色が暗い地平線にまで広がっていた。
「蛇の山も気分悪かったけど、草も木も生えていたよ。四つ足の小さな動物も居たよ。
山に帰りたいなあ」
ターナはリュウが黙って歩いているので、半ば独り言のように言った。
「それにこのまま行ったら、きっと食べる物がないよ」
それでもリュウは黙っている。
”僕、夜になってリュウが眠ったら、山に戻って何か食べ物を捜して来よう”
とターナは考える。
蛇人の山も遥か後ろになり、円形の荒野の中心を二人はとぼとぼと歩き続けた。
「ターナ、何か見えないか」
リュウがそう言ったのは太陽が行く手に見える頃だった。
ずっとリュウのことばを待っていたターナはすぐに高く飛上った。
それを見上げてリュウはターナが以前ほど羽根をばたつかせないで、軽く飛べるのに気が付いた。
”あいつが生れてから数十日だ。鳥人は成長が速いな。僕は十才にならないと一人歩きさせて貰えなかった”
「何もなかったよ」
ターナは降りて来るとすぐに言った。
「東の方に山が見えたろう」
「うん」
「南の方は」
「空が真っ暗だ。地面も真っ暗だ」
「北は?」
「森があった。山みたいにたくさん木があった」
”ここからは見えない。一日以上かかるに違いない”
「その辺りは気分が重いよ。黒い空気が死んでる」
「西は?」
リュウは辛抱強く言った。
「遠くは真黒。
太陽があるのに明るくない。
近くには大きな岩がころん。
それだけ」
”それだけ報告できれば上出来だ。いまいましい鳥人め”
リュウは再び歩き始めた。
ターナの言う近くの岩が見えたのは、もうかなり日が傾いていた。
それは道のすぐ傍らにあった。
始め、平坦な大地にころんと転がった豆粒のように見え、近付くと背丈の二倍はある丸い岩で下部は地面に埋もれていた。
通り過ぎる時、誰かに見られている感じがして、リュウは立止まり、ゆっくり振向いた。
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