炎の惑星 10
六人全員が通信機を見詰めている
「私、何もしてないわ」
と、和子は青ざめて言った。
「判っている。アンテナが壊れたのだ」
と、春樹がブラウン管を指差した。
ブラウン管に船外のアンテナが半ば折れているのが、映っていた。
「塩素が燃えた時、爆発が起っていた」
と、浩人。
春樹は頷いた。
「外に出て、熔接しなければならない。
熔接の火花でもっと爆発が起るだろう」
「熔接の前に、辺りの塩素を燃やしておきましょう」
と、美智子。
保夫は不安そうに春樹を見る。
そんな部下の様子に春樹は労るように言った。
「私が出る」
「でも……」
「手際よくやらなければならん」
と、春樹。
「はあ」
「もう一度、火炎放射する。
その間私は準備している」
春樹は扉から出て行った。
保夫は操縦盤に向った。
「何時間で燃え尽きるかしら」
と、美智子。
「十時間ぐらいかかるでしょう」
と、浩人。
「私はそれまで休んでいます」
美智子も出て行った。
すぐに窓の外では桃色の炎と爆発の嵐が吹荒れた。
暗闇の美智子の部屋。
美智子はベッドで眠っていた。
「え?」
美智子は驚いて起上がった。
「誰か居る?
そんな筈はないわ。
誰も個人の部屋には入ってはいけない掟よ」
手を伸ばして明りを点けようとすると、春樹の声が聞こえた。
「明りは点けられない方がいいですね」
「春樹!」
驚きながらも手を伸ばし、タイトツーツを身に着けた。
「なぜ?」
暗闇から春樹の低い声が湧き上がって来た。
「美智子様のお返事を伺いたくて参りました」
「何の返事、ですか?」
「私は明日、修理のために船の外に出ます。
万全を期するつもりでも、塩素ガスは流入して来るでしょう。
命の保障はありません。
今日限りの命かも知れません」
「臆したのですか?」
「私が?
まさか。
臆病では貴方のお部屋には入れますまい」
美智子は震えが止らない。
春樹は性急に言った。
「美智子様。今夜、私と結婚して戴きたい」
「それは不可能よ。
生と死の権利を持つ者の了解なしに結婚すれば追放です」
「私は追放なぞされません。
現在、この船は母船と通信できません。
もし貴方が拒否なされば、この船の主導権を戴く事はたやすいのですよ。
この船の機動部分は私にしか動かせない。
私の反乱は成功します。
他の四人には暫く眠ってもらいましょうかね。私が母船と取引する時の人質として」
「取引?」
美智子はかすれた声で言った。
「勿論、貴方が承知して下されば、私も無益な抵抗は致しますまい」
「明りをつけて。
暗いと気が狂いそうだわ」
明りの中、正面のソファに黒いタイトスーツの春樹がゆったりと座って、美智子を見詰めている。
うっとりとした、しかし慕情に輝く瞳で。
春樹はため息をついた。
「ああ、美しい人だ。
明日は死んでも、今日貴方を胸に抱く事ができる」
「私、何もしてないわ」
と、和子は青ざめて言った。
「判っている。アンテナが壊れたのだ」
と、春樹がブラウン管を指差した。
ブラウン管に船外のアンテナが半ば折れているのが、映っていた。
「塩素が燃えた時、爆発が起っていた」
と、浩人。
春樹は頷いた。
「外に出て、熔接しなければならない。
熔接の火花でもっと爆発が起るだろう」
「熔接の前に、辺りの塩素を燃やしておきましょう」
と、美智子。
保夫は不安そうに春樹を見る。
そんな部下の様子に春樹は労るように言った。
「私が出る」
「でも……」
「手際よくやらなければならん」
と、春樹。
「はあ」
「もう一度、火炎放射する。
その間私は準備している」
春樹は扉から出て行った。
保夫は操縦盤に向った。
「何時間で燃え尽きるかしら」
と、美智子。
「十時間ぐらいかかるでしょう」
と、浩人。
「私はそれまで休んでいます」
美智子も出て行った。
すぐに窓の外では桃色の炎と爆発の嵐が吹荒れた。
暗闇の美智子の部屋。
美智子はベッドで眠っていた。
「え?」
美智子は驚いて起上がった。
「誰か居る?
そんな筈はないわ。
誰も個人の部屋には入ってはいけない掟よ」
手を伸ばして明りを点けようとすると、春樹の声が聞こえた。
「明りは点けられない方がいいですね」
「春樹!」
驚きながらも手を伸ばし、タイトツーツを身に着けた。
「なぜ?」
暗闇から春樹の低い声が湧き上がって来た。
「美智子様のお返事を伺いたくて参りました」
「何の返事、ですか?」
「私は明日、修理のために船の外に出ます。
万全を期するつもりでも、塩素ガスは流入して来るでしょう。
命の保障はありません。
今日限りの命かも知れません」
「臆したのですか?」
「私が?
まさか。
臆病では貴方のお部屋には入れますまい」
美智子は震えが止らない。
春樹は性急に言った。
「美智子様。今夜、私と結婚して戴きたい」
「それは不可能よ。
生と死の権利を持つ者の了解なしに結婚すれば追放です」
「私は追放なぞされません。
現在、この船は母船と通信できません。
もし貴方が拒否なされば、この船の主導権を戴く事はたやすいのですよ。
この船の機動部分は私にしか動かせない。
私の反乱は成功します。
他の四人には暫く眠ってもらいましょうかね。私が母船と取引する時の人質として」
「取引?」
美智子はかすれた声で言った。
「勿論、貴方が承知して下されば、私も無益な抵抗は致しますまい」
「明りをつけて。
暗いと気が狂いそうだわ」
明りの中、正面のソファに黒いタイトスーツの春樹がゆったりと座って、美智子を見詰めている。
うっとりとした、しかし慕情に輝く瞳で。
春樹はため息をついた。
「ああ、美しい人だ。
明日は死んでも、今日貴方を胸に抱く事ができる」
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