炎の惑星 5

「あれは物体接近の知らせ。危険はない」
 続いて二次警報が聞こえ、船体の激しい揺れと同時にまぎれもなく艦載砲が火を吹く音。

 美智子は飛び起きて銀色のタイトスーツを身に着け、部屋を飛出した。
 長い髪が閉じられる扉の内側に残りかけ、ふわりと漂い出た。

 美智子が中央の扉から入ると夜の展望室では、春樹が操縦席にぼんやり座っていた。
 浩人と和子と保夫は外を見ている。
 一郎が進み出た。
「私達は下界を観測しておりました」
「敬語はよろしい」
「はい。その時、探検船は五十メートルの高さにありました」
 一郎の話はこうだった。

 浩人と一郎が観測機を操作。
 保夫と和子は操縦席に向っていた。
 窓の外は、湖のまわりに藻のようなものが散らばっている。
「あれは夜明けには採集しよう。楽しみだなあ」
と、一郎。
 湖の表面は静かに波打ち、星明りにきらきら輝いている。
「超音波による深度測定では、約二百メートル。でも、中間に別の反射があるわ。水に浮いているようにゆらゆらしている」
と、和子は報告した。
「空中からでは、水中のスペクトル分析は充分な結果が得られない。明日だな」
と、浩人。

 突然、湖水が湧き上がり、物体接近の警報が鳴った。

 湖から巨大な昆布のような物が立上がった。
 ゆらめきながら、枝を伸ばして急速に近づいて来る。
 幅はそれ程でもないが、高さは優にこの船を越えている。

 四人は茫然と眺めていた。

 春樹が中央の扉から飛込んで来て、操縦席に着き、操作した。

 二次警報が鳴る。

 窓の外は、急速な移動で湖と共に昆布が遠ざかる。
 その昆布へ艦載砲の火が浴びせられた。
 昆布は燃え、ばらばらになって落ちていった。


 美智子が一郎の話に耳を傾けている間、浩人、春樹、和子、保夫はそれぞれの場所に戻っていた。

「通常警報は危険を知らせるものではないのですが、
 春樹は生物も居ない筈のこの星の五十メートルの高さに、物体が接近するのはおかしいと考えて、飛んで来てくれたのです」
 一郎は窓の外を指差した。

「通常警報は聞きましたが、異常と判断出来なかったのです。
 遅れて申し訳なく思います。
 春樹はよくやってくれました。
 ありがとう」
 言いながら、美智子が見ると、春樹は所在なげにスクリーンを眺めている。

「一郎、夜明けまで湖の観測を続けて下さい。
 船の高度を百メートルにまで上げましょう」
 美智子は各人に指示し、春樹の方を見た。
 春樹は操縦席から立上がり、自分の机に向い、物憂げな態度でデータの整理を始めた。

 美智子は唇を噛んで、部屋に戻った。

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